■以上
■観点
■本件
本件建物賃貸借契約における連帯保証人の保証責任の 範囲として,入居者の賃料不払を無制限に保証していると解することは相当で なく,自ずから社会的相当性の認められる一定の範囲に限定されるべきもので - 11 - はあるが,その責任範囲についての明確な約定の存在しない本件において,福 山市営住宅等条例41条( )の規2 定のみを根拠として連帯保証人の保証の本旨 は3ヶ月を限度とするものであると解することは必ずしも相当でなく,この点 に関する被告の上記主張は直ちには採用できない。
3 しかしながら,公営住宅の賃貸借契約における連帯保証人の意義が上記判示 のとおりであって,入居者の賃料不払いを無制限に保証していると解すること は相当でないことは上記判示のとおりであるから,公営住宅が住宅に困窮する 低所得者に対し低廉な家賃で賃貸し,市民生活の安定と社会福祉増進を目的と していることから,公営住宅の賃貸借契約に基づく賃料等の滞納があった場合 の明渡等請求訴訟の提起に関して,その行政実務において,滞納額とこれにつ いての賃借人の対応の誠実さなどを考慮して慎重に処理すること自体は相当且 つ適切な処置であるとしても,そのことによって滞納賃料等の額が拡大した場 合に,その損害の負担を安易に連帯保証人に転嫁することは許されず,明渡等 請求訴訟の提起を猶予する等の処置をするに際しては,連帯保証人からの要望 があった場合等の特段の事情のない限り,滞納額の増加の状況を連帯保証人に 適宜通知して連帯保証人の負担が増えることの了解を求めるなど,連帯保証人 に対しても相応の措置を講ずべきものであるということができる。
これを本件についてみるに,連帯保証人である被告に対する原告の催告状況 は上記認定のとおりであって,賃借人である訴外Aが,平成6年夏頃から,納 付誓約書に記載された約束どおりの納付を滞るようになり,その後,新たな滞 納分も加わって,平成11年8月25日現在の滞納額は53万7700円,平 成12年8月14日現在の滞納額は59万4100円,平成13年9月3日現 在の滞納額は99万0800円,平成14年8月7日現在の滞納額は129万 3000円,平成15年8月20日現在の滞納額は172万3400円,平成 16年12月20日現在の滞納額は226万7000円,平成17年11月1 7日現在の滞納額は265万3400円と増加したにもかかわらず,被告に対 - 12 - しては「福山市営住宅使用料, (家賃)滞納整理要綱」(甲16)に反して, 平成5年12月20日に催告書を送付したのを最後に,平成18年10月11 日に至るまで,催告書を全く送付することなく,また,訴外Aの賃料滞納の状 況についても一切知らせずに放置していたものであり,原告には内部的な事務 引継上の過失又は怠慢が存在するにもかかわらず,その責任を棚上げにする一 方,民法上,連帯保証における責任範囲に限定のないことや,連帯債務におけ る請求に絶対効が認められることなどから,被告に対する請求権が形骸的に存 続していることを奇貨として,敢えて本件訴訟提起に及んでいるものであり, 本件請求における請求額に対する被告の連帯保証人としての責任範囲等を検討 するまでもなく,本件請求は権利の濫用として許されないものというべきであ る。
4 以上によれば,原告の本訴請求は,その余の点について判断するまでもなく, 理由がないから棄却することとし,訴訟費用の負担につき民事訴訟法61条に 従い,主文のとおり判決する。
2 争点 (1) 本件解雇の有効性(原告のうつ病は「業務上の疾病」か) (2) 被告の債務不履行責任又は不法行為責任の有無(原告がうつ病になり就 業できない状態にあることについて,被告に安全配慮義務違反があるか) (3) 被告が原告に支払うべき賃金及び損害賠償金の額 3 争点に関する当事者の主張(要旨) (1) 争点(1)(本件解雇の有効性(原告のうつ病は「業務上の疾病」か))に ついて (原告の主張) ア原告は,深谷工場において「M2ライン立上げプロジェクト」の「アレ イドライ工程」リーダーを務めていたところ,平成12年12月ころから 長時間深夜残業・休日出勤が連続するようになり,また,翌平成13年1 月ころからは多発したトラブルの対応等に追われるなど,業務上の過度の 精神的負荷を負った。
原告は,この精神的負荷を負ったことにより,心身に異常をきたし,同 年4月11日に「抑うつ状態」と診断された。
イ原告には業務以外に精神疾患発症の原因となる事情は一切ない。
ウしたがって,原告が従事していた前記業務と原告の精神疾患発症との間 に相当因果関係,すなわち業務起因性のあることは明白であり,現在もな お療養中である以上,労働基準法19条1項(及び就業規則27条)に反 し,本件解雇は無効であるというべきであって,原告が現在も労働契約上 の権利を有する地位にあることは明らかである。
(被告の主張) ア業務の量という側面からみると,M2プロジェクトにおいて,平成12 年12月から平成13年4月までの5か月間において一時的に時間外労働 - 10 - 時間が増加したものの,週40時間を超える労働時間は1か月当たり54 時間11分(原告作成の甲179によっても70時間)程度であり,過重 とまではいえず,さらにプロジェクト終了後は時間外労働時間が減少して おり,恒常的な長時間労働であったとはいえない。
業務の質という側面からみると,装置立上げ期間における装置の条件出 し等については,全般的に装置メーカーが主体となって実施するため,原 告ら技術者への負担は軽く,決して過重な業務であったとはいえない。
イ原告の業務以外の心理的負荷に関する情報,個体側脆弱性に関する情報 については,会社の持つ情報,熊谷労働基準監督署の調査のみでは明らか になっていない可能性が十分に考えられる。
十分な調査が行えておらず (行うことができない),個体側の脆弱性に未解明な点が多いとしても, それは,業務以外の心理的負荷,個体側要因がないということを示すもの ではない。
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とくに,業務による心理的負荷による精神障害は,医学上一般的には6 か月から1年程度の治療で治ゆする例が多いとされているところからする と,原告が,最終出勤日である平成13年10月6日以降,今日現在まで 6年間以上も会社業務(原告が主張する病気発症の原因)に一切携わって いないにもかかわらず,現在も治ゆしていないことからしても,原告の病 気発症の原因は業務に起因するものではないと考えられる。
ウしたがって,原告に精神疾患があるとしても,それが前記業務による心 理的負荷が原因である(業務との相当因果関係がある)とはいえず,「業 務外」の疾病にすぎないから,本件解雇が労働基準法19条1項(及び就 業規則27条)に反し無効であるということはできない。
(2) 争点(2)(被告の債務不履行責任又は不法行為責任の有無(原告がうつ病 になり就業できない状態にあることについて,被告に安全配慮義務違反があ るか))について - 11 - (原告の主張) ア被告は,コストを削減して営業利益を上げることのみを追求し,原告に 対し,以下のとおりの対応をした。
原告はこれらの被告の行為により,精 神障害を発症・増悪させ,休業を余儀なくされた。
? 連日長時間労働及び休日労働を行わせた。
? 無理なスケジュールを設定した。
? 原告に多大な負担がかかっていたにもかかわらず,人員の配置・補充 や業務内容の調整を行わなかった。
? 原告に対し適正な相談・アドバイスをせず,むしろ不可能な業務指示 を与えるなど心理的負荷を与えた。
? 原告の健康状態を認識していた以上,その症状に応じて業務内容の軽 減等の適切な処置をとるべきであったのにそれを怠った。
イしたがって,被告において,原告に対する安全配慮義務違反があるとい うべきである。
(被告の主張) ア原告が,それまで一般的な従業員として業務に従事していることを前提 として,M2プロジェクトにおけるドライエッチング工程のリーダーとし たこと,また,被告が原告独自の「ストレス脆弱性」を認識し得ない中で, メンタルヘルスに関する問診を含む定期健康診断を実施した上で,原告か らの体調不良の申し出による業務負荷の軽減,被告深谷工場健康管理室に おける産業医との面談,臨床心理士によるカウンセリングの実施,社外医 療機関への受診促進を実施してきたなど十分な配慮を行っている。
また,平成13年10月以降の欠勤後,被告は原告の職場復帰に向けて 努力してきたが,最終的には,原告からの職場復帰の意思はないとの回答 があったことから,就業規則に基づき,平成16年9月9日付けで本件解 雇に至ったものであり,被告の対応について非難されるべき点はない。
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